リモートワークで自分の成長に不安を感じる時:相談のハードルを下げる小さな工夫
リモートワークにおける成長への不安と相談の難しさ
リモートワークが一般化し、働き方の自由度が増した一方で、オフィスで働いていた頃には自然にできていたことが難しくなったと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。その一つに、自身のキャリアパスや技術的な成長について、上司や先輩に気軽に相談することの難しさがあるかと思います。
オフィスでは、ランチの休憩時間や業務の合間に立ち話で「最近〇〇の技術を勉強してるんですけど」「今後のキャリアってどう考えてますか?」といったフランクな会話から相談に繋がることがありました。しかし、リモート環境では意図的にコミュニケーションの機会を設けない限り、そのような偶発的な会話は生まれにくくなります。
特に、経験年数が数年のエンジニアの方々は、今後の専門性をどう深めるか、マネジメントの道に進むか、あるいは特定の技術領域でエキスパートを目指すかなど、キャリアについて悩みやすい時期でもあります。しかし、リモート環境では「今、話しかけても大丈夫かな」「相談するほどのことかな」と躊躇してしまい、不安を一人で抱え込んでしまうケースが見られます。
なぜリモートだと相談しにくいのか
リモートワークにおける相談の難しさは、いくつかの要因が考えられます。
まず、相手の状況が見えにくいことが挙げられます。オフィスであれば席にいれば大まかな状況が分かりますが、リモートでは相手が会議中なのか、集中して作業しているのか、休憩中なのかなどが把握しづらいため、「忙しいところを邪魔してしまうのではないか」という心理的な壁が高くなります。
次に、コミュニケーションの形式が主にチャットやビデオ会議に限られる点です。テキストベースのコミュニケーションでは、表情や声のトーンが伝わりにくく、相談というデリケートな内容を切り出すことに難しさを感じる場合があります。また、改めて時間を取ってビデオ会議を設定するのは、相手に手間をかけてしまうという意識から、気軽に相談するのをためらわせることがあります。
このように、リモートワーク環境では、相談という行為そのもののハードルが、オフィスワーク時よりも高くなりやすい傾向があると言えます。
相談のハードルを下げるための小さな工夫と体験談
このような状況を乗り越え、自身の成長のために相談をためらわないようにするためには、いくつか「小さな工夫」を試すことが有効です。以下に、私が実際に試したり、他のエンジニアから聞いた体験談を基にした実践例をご紹介します。
1. 相談内容を事前に言語化し、メッセージでアポイントを取る
いきなり相談を持ちかけるのではなく、チャットツールなどを活用して、相談したい内容の概要を簡潔に伝えつつ、都合の良い時間を尋ねることから始めます。
例: 「〇〇さん、今後のキャリアの方向性について少しご相談させて頂きたいことがあるのですが、来週あたりで15分ほどお時間を頂けますでしょうか。ご都合の良い時間帯をいくつか教えていただけますと幸いです。」
このように、相談したい内容を具体的に伝え、必要な時間を示し、相手に選択肢を与えることで、相手は受け入れやすくなります。また、相談する側も、事前に内容を整理することで、短い時間でも効果的な相談ができるようになります。
2. 既存の1on1ミーティングを最大限に活用する
多くのチームでは、上司との1on1ミーティングが定期的に設定されているかと思います。これを、単なる進捗報告の場ではなく、自身の成長やキャリアについて話す機会として積極的に活用します。
1on1のアジェンダに「キャリアについて相談したいこと」「今後取り組みたい技術領域」といった項目を事前に加えておくことで、公式な場で安心して相談することができます。
3. 相談しやすい「プチ時間」を活用する
例えば、チームの朝会や夕会が終わった直後に、参加者に向けて「この後5分だけ、〇〇の件で少し質問しても大丈夫な方いらっしゃいますか?」と軽く呼びかけてみる方法です。全体の時間が終わった後であれば、他のメンバーへの影響も少なく、短時間であれば相手も時間を確保しやすい場合があります。ただし、これはチームの文化や雰囲気にもよりますので、様子を見ながら試すのが良いでしょう。
4. メンター制度や社内勉強会を活用する
もし社内にメンター制度があれば積極的に活用することをお勧めします。公式な制度として設定されている場合、メンターも相談に乗る準備ができています。また、社内勉強会などで同じ技術に興味を持つ同僚や先輩と繋がることも、非公式な相談相手を見つけるきっかけになります。
5. 複数の相手に分散して相談する
一人の相手に全てを相談しようとせず、内容に応じて複数の相手に分散して相談することも有効です。技術的な深い内容は技術力の高い先輩に、キャリアパスの悩みは上司や人事担当者に、日々のちょっとした作業の疑問は身近な同僚に、というように相手を選び分けることで、それぞれの相談のハードルが下がりやすくなります。
小さな一歩を踏み出した体験談
以前、私はリモートワークで自分のキャリアの方向性に漠然とした不安を感じていました。オフィスであれば、チームリーダーに気軽に声をかけられたのですが、リモートになってからはビデオ会議の時間を取るのが申し訳なく感じてしまい、なかなか相談できずにいました。
しかし、ある時、意を決してチャットで「今後のキャリアについて、少しご意見を頂戴したいのですが、お時間頂戴できますでしょうか?」とメッセージを送ってみました。すると、リーダーは快く応じてくれ、1on1とは別の時間を15分だけ確保してくださいました。
その短い時間の中で、私が考えていることや不安に感じていることを率直に話すことができました。リーダーからは、私のスキルセットを踏まえた上で、どのような経験を積むのが良いか、社内でどのような機会があるかなど、具体的なアドバイスを頂くことができました。
この体験を通して、相談することは決して相手の負担になることばかりではないのだと実感しました。また、完璧に準備が整っていなくても、まずは小さな一歩として「相談の意図を伝える」ことが重要だと学びました。この小さな成功体験が、その後の他の相談のハードルを下げるきっかけにもなりました。
まとめ:成長のための相談は心理的安全性を高める
リモートワーク環境での自身の成長に関する相談は、オフィスワークに比べて心理的なハードルがあるかもしれません。しかし、キャリアや技術的な成長についての悩みは、決して一人で抱え込む必要はありません。
今回ご紹介したような「小さな工夫」、例えばチャットで事前にアポイントを取る、1on1を有効活用する、相談内容を具体的に伝えるといった方法を試すことで、相談のハードルを下げることができます。
自身の成長のために声を上げ、チームメンバーや上司に相談することは、個人的な成長に繋がるだけでなく、チーム全体の心理的安全性を高めることにも寄与します。「このチームでは、自身の成長について安心して話せるのだ」という感覚は、メンバーのエンゲージメントを高め、より建設的な関係性を築く基盤となります。
完璧を目指すのではなく、まずは「小さな一歩」を踏み出してみてはいかがでしょうか。その一歩が、あなたのリモートワークでのキャリアをより豊かなものにするはずです。