リモート安全体験談

リモートワークでの情報共有不足が生む不安:あるエンジニアの小さな改善体験談

Tags: リモートワーク, 情報共有, 心理的安全性, コミュニケーション, エンジニア

リモートワークが普及し、働く場所の自由度が増した一方で、オフィス勤務時には自然と得られていた情報が入りにくくなったと感じる方も少なくないのではないでしょうか。特にチーム内での情報共有が不足すると、業務の効率が落ちるだけでなく、自身の貢献度が見えにくくなったり、チームから置いていかれているような孤立感を覚えたりと、心理的な不安に繋がることがあります。この記事では、リモート環境での情報共有不足に悩んだあるエンジニアの体験談と、それを改善するために取り組んだ小さなアクションについてご紹介します。

リモート環境での情報共有の壁

私が経験数年目のエンジニアとしてリモートワークを始めた当初、情報共有の難しさを痛感しました。オフィスでは、開発中に少しつまずいた時や仕様で迷った時に、近くにいるチームメンバーに気軽に声をかけたり、ホワイトボードを見ながら話し合ったりすることで、必要な情報が瞬時に得られました。しかし、リモート環境ではそうはいきません。

特に困ったのは、非同期コミュニケーションツールでのやり取りだけでは、情報が断片的になりがちなことでした。あるタスクを進めている際に、以前別のメンバーが同様の課題に取り組んだことがあったにも関わらず、その情報にアクセスできず、同じ調査をやり直してしまったことがありました。また、チーム全体の進捗や、他のメンバーが今何に集中しているのかが把握しづらく、自分のタスクが全体の中でどのような位置づけにあるのかが見えにくく感じることもありました。

このような情報共有の不足は、「もしかして、自分だけがこの情報を知らないのだろうか」「自分が共有すべき情報を見落としているのではないか」といった不安を生み、チームへの貢献に自信が持てなくなる原因となりました。さらに、「こんな基本的なことを質問しても良いのだろうか」「忙しそうなチームメンバーに話しかけるのは気が引ける」と感じるようになり、必要な情報の確認や共有を躊躇してしまう悪循環に陥ってしまったのです。これは、まさに心理的安全性が低い状態だったと言えます。

小さなアクションから始めた改善

この状況を改善するために、私はいくつかの小さなアクションから始めることにしました。

  1. 「今日の小さな発見」を共有する習慣をつける: 毎日の終わりに、その日の業務で学んだこと、発見したこと、つまずいたことと解決策などを、チーム内の情報共有チャンネルに短く投稿するようにしました。これは、大げさな日報ではなく、「今日の小さな発見」という気軽なタイトルで始めました。「〇〇というライブラリのこの機能は便利だった」「△△の環境設定で少し詰まったが、ログを見たら原因が分かった」といった些細な内容でも構わないと意識しました。これにより、他のメンバーが同様の問題に直面した際に役立つ可能性があり、また、自分がチームに貢献できているという感覚を得られるようになりました。

  2. 疑問点は溜め込まず、適切なチャンネルで「まず質問」を意識する: 以前は「自分で調べるべきか」「誰に聞くべきか」と悩み、時間をかけてしまっていましたが、「5分考えて分からなければ、適切なチャンネルで質問する」というルールを自分に課しました。その際、「〇〇について調べていますが、△△という点で詰まっています。何かご存知の方がいれば教えていただけますでしょうか?」のように、何を調べ、何が分からないのかを具体的に伝えるように工夫しました。これにより、質問へのハードルが下がり、必要な情報を早く得られるようになりました。また、質問自体が他のメンバーへの情報提供にもなることに気づきました。

  3. 短い定例ミーティングでの情報共有を具体的に: デイリースクラムのような短い定例ミーティングでは、「〜をやる」だけでなく、「〜について調査した結果、〇〇という課題が見つかり、次に△△を進めます」のように、もう少し具体的な状況を共有するようにしました。これにより、他のメンバーが私の状況を把握しやすくなり、関連情報の提供や協力を得やすくなりました。また、自分の進捗を具体的に言葉にすることで、自分自身の状況整理にも繋がりました。

小さなアクションがもたらした変化

これらの小さなアクションを続けるうちに、チーム内の情報共有が少しずつ活性化してきたと感じています。私自身の不安も軽減されました。疑問点をすぐに質問できるようになったことで、無駄な調査時間が減り、タスクを効率的に進められるようになりました。「今日の小さな発見」を共有することで、他のメンバーからリアクションをもらえたり、それが議論のきっかけになったりすることもありました。

また、私が積極的に情報を共有する姿勢を見せたことで、他のメンバーも小さなことでも共有しやすくなった、と言ってもらえたこともありました。これは、情報共有における心理的なハードルは、自分だけでなくチームメンバー全員が感じている可能性があることに気づかされました。

まとめ

リモートワークにおける情報共有の不足は、個人の業務効率だけでなく、チーム全体の心理的安全性に影響を与えます。私の場合、小さなアウトプットを習慣化したり、質問の仕方を工夫したり、定例での共有を具体的にしたりといった「小さなアクション」の積み重ねが、この状況を改善するきっかけとなりました。

心理的安全性は、何も大きな改善策を一気に導入することで得られるものではありません。今回ご紹介したような、日々の業務の中で意識できる小さな振る舞いや工夫の積み重ねが、自分自身の安心感に繋がり、結果としてチーム全体の心理的安全性を高めることにも繋がるのだと実感しています。もし今、リモートワークでの情報共有に不安を感じている方がいらっしゃれば、まずは今日から一つ、小さなアクションを試してみてはいかがでしょうか。