リモート安全体験談

リモート会議での発言をためらう心理:あるエンジニアの小さな実践体験談

Tags: リモートワーク, 心理的安全性, 会議, コミュニケーション, 体験談, エンジニア

リモートワークにおける会議での「沈黙」

リモートワークが広く普及し、私たちの働き方は大きく変化しました。通勤時間がなくなり、柔軟な場所で働けるようになった一方で、新たな課題も生まれています。その一つが、リモート会議におけるコミュニケーションの難しさです。特に、多くの人が経験するのが「発言をためらってしまう」という状況ではないでしょうか。

対面での会議とは異なり、リモート会議では相手の微妙な表情や場の空気を読み取りづらいことがあります。また、発言のタイミングが掴みづらく、他の人と同時に話し始めてしまったり、逆に誰かが話し始めるのを待ってしまったりすることも少なくありません。こうした状況が重なると、「せっかく考えた質問も、今さら聞くのは気が引けるな」「この意見、他の人はどう思うだろう…」といった躊躇が生まれやすくなります。

私自身も、リモートワークになってから、以前にも増して会議で発言することにハードルを感じる時期がありました。特に、参加人数が多い会議や、あまり慣れていないプロジェクトの会議では、ほとんど終始聞き役に徹してしまうことが少なくありませんでした。

発言をためらっていた時の心理

なぜ、私は会議で発言することをためらっていたのでしょうか。当時の自分の心理を分析してみると、いくつかの要因が考えられます。

まず、「発言の内容が的外れだったらどうしよう」という恐れがありました。特に、自分の理解が曖昧な点について質問する場合、見当違いな質問をしてチームメンバーの貴重な時間を無駄にしてしまうのではないかと不安に感じていました。

次に、「他の人が既に考えていることなのではないか」「こんな初歩的な質問は自分だけかもしれない」という思い込みもありました。これは、リモート環境だと非公式な場での情報交換が減り、他のメンバーの考えや状況が見えにくくなることから生じやすかったように思います。

また、発言のタイミングを計るのが難しいため、「今、発言して議論の流れを止めてしまわないか」「話したいタイミングで他の人が話し始めてしまう」といったストレスも、発言を躊躇させる要因となっていました。結果として、重要な確認事項や懸念点があっても、会議中に伝えることができず、後から個別に確認したり、そのままにしたりすることもありました。

このような状況は、心理的安全性が低いチームで起こりやすいと言われています。心理的安全性とは、「チームの中で、自分の考えや気持ちを、誰に対してでも安心して発言できる」状態を指します。発言をためらってしまう背景には、「自分の発言によって否定的な評価を受けるかもしれない」という不安が潜んでいることが多いのです。

小さな実践で心理的な壁を乗り越える

この状況を変えたいと感じ始めた私は、まず「発言することそのもの」へのハードルを下げるための、いくつかの小さなアクションを試みることにしました。

1. 会議前に「何を話すか」を書き出す

些細なことですが、会議が始まる前に「今日の会議で確認したいこと」「気になっている点」などを箇条書きで書き出すようにしました。これにより、頭の中で漠然と考えていたことが明確になり、発言のハードルが少し下がりました。特に、質問したい点は具体的に言語化しておくことで、会議中にスムーズに発言しやすくなりました。

2. まずは「簡単な一言」から始める

いきなり込み入った質問や意見をするのではなく、会議の冒頭での簡単な挨拶や、誰かの発言に対する短い同意の相槌など、ハードルの低い一言から発言する練習を始めました。「〇〇さんの意見に賛成です」や「そこ、少し気になっていました」といった短い言葉でも、声に出すことで会議に参加している感覚が高まります。

3. チャットを活用する

会議中にリアルタイムで発言するのが難しい場合、会議と並行して使用しているチャットツールに質問やコメントを書き込むようにしました。例えば、発表を聞きながら気になった点をチャットに投稿しておけば、後で議題として取り上げてもらえたり、誰かが拾ってくれたりする可能性があります。また、会議後にチャットで質問するという方法も、心理的なハードルを下げる上で有効でした。

4. 「完璧さ」を求めすぎない

発言内容が完璧である必要はない、と考え方を変えました。自分の理解を確認するための質問や、現時点での考えを率直に伝えることも、チーム全体の理解促進やより良い議論につながることがあると気づきました。たとえ質問の仕方が少し拙くても、チームメンバーは真摯に受け止めてくれることがほとんどです。

小さなアクションが生んだ変化

これらの小さなアクションを意識的に続けるうちに、徐々にリモート会議での発言に対する抵抗感が薄れていきました。会議中に疑問に思ったことをすぐに質問できるようになり、自分の考えをチームに共有する機会も増えました。

特に変化を感じたのは、チームメンバーとの関係性です。積極的に発言するようになったことで、自分の考えや業務の状況が他のメンバーに伝わりやすくなり、相互理解が深まったように感じます。また、私が発言することで、他のメンバーも安心して発言しやすくなる、という良い循環が生まれたようにも思います。

もちろん、今でも会議の種類や状況によっては発言をためらうこともゼロではありません。しかし、「完璧でなくてもいい」「まずは簡単なことから試してみよう」という意識を持つことで、以前のように完全に黙り込んでしまうことはなくなりました。

まとめ

リモートワークにおける会議での発言の躊躇は、多くのエンジニアが直面する課題です。その背景には、「失敗したくない」「浮きたくない」といった心理が潜んでいることがあります。

もしあなたがリモート会議での発言にハードルを感じているなら、ぜひ今回ご紹介したような「小さなアクション」から試してみてはいかがでしょうか。会議前に話す内容を書き出す、簡単な一言から発言してみる、チャットを活用する、そして発言の完璧さを求めすぎない。

これらの小さな一歩が、あなたの心理的な壁を乗り越え、リモート環境でも安心して自分の意見や質問をチームに伝えられるようになるための助けとなることを願っています。チーム全体の心理的安全性を高めるためにも、一人ひとりが少しずつ行動を変えていくことが大切です。