リモート安全体験談

リモートでタスクが抱えきれない時「手伝ってほしい」を言えない心理：あるエンジニアの小さな打開策

Tags: リモートワーク, 心理的安全性, タスク過多, 情報共有, チームワーク

リモートワークが普及し、働く場所の制約は大きく緩和されました。しかし、その一方で、チームとの物理的な距離が生じることで、新たなコミュニケーションの課題も生まれています。中でも、タスクが思うように進まない時や、自分だけでは抱えきれなくなった時に、「手伝ってほしい」「助けてほしい」とチームに率直に伝えることへの心理的なハードルを感じている方は少なくないのではないでしょうか。

この記事では、リモートワーク環境でタスクを抱え込みがちなエンジニアの心理に焦点を当て、実際に筆者自身が経験した失敗や、そこから小さな行動で状況を改善できた体験談をご紹介します。

リモートワークでタスクを抱え込んでしまう背景

オフィスで働いていた頃は、周囲の様子からメンバーの忙しさを察したり、「ちょっといいですか？」と気軽に声をかけたりすることで、比較的容易に情報共有や相談ができていました。しかしリモートワークでは、意図的にコミュニケーションを取ろうとしない限り、チームメンバーの状況が見えづらく、自分の状況を伝えるタイミングも難しく感じることがあります。

特に、タスクが遅れている、あるいは予想外に困難に直面しているといった状況を伝えることには、以下のような心理的な抵抗が伴うことがあります。

これらの心理的な壁が、「もう少し頑張ればできるはず」「一人で解決しなければ」といった考えにつながり、結果として問題を抱え込み、状況をさらに悪化させてしまうことがあります。心理的安全性が低いと感じられるチームや組織では、こうした傾向がより顕著になる可能性があります。

「助けて」が言えなかった過去の体験談

私自身、リモートワークに本格移行した当初、まさにこの「抱え込み」の罠にはまっていました。ある新規機能開発のタスクで、当初想定していなかった技術的な問題に直面したのですが、「自分で調べれば解決できるだろう」「チームの他のメンバーは忙しそうだから、こんなことで質問するのは申し訳ない」と考え、誰にも相談せずに一人で対応しようとしました。

チャットツールでの進捗報告は「調査中です」「苦戦しています」といった曖昧な表現にとどめ、具体的に何に困っているのかを明確に伝えませんでした。結果、解決には想定以上の時間がかかり、納期が迫ってきても目処が立たない状況に陥ってしまいました。

この時初めて、流石にまずいと感じ、勇気を出してチームリーダーに状況を正直に説明しました。リーダーは私の説明を丁寧に聞き、すぐに他のチームメンバーに声をかけ、詳しいメンバーがペアプログラミングで一緒に問題を見てくれることになりました。

しかし、問題が複雑化していたため、解決にはさらに時間を要し、最終的にはチーム全体で協力してリカバリーを行うことになりました。この経験から学んだのは、問題を早期に共有し、助けを求めることの重要性でした。私の抱え込みが、結果的にチーム全体に大きな負担をかけることになってしまったのです。

この一件は、私の「助けて」を言えない心理が、自分だけでなくチーム全体の成果にも影響することを痛感させられる出来事でした。そして同時に、遅れてはしまいましたが、私が正直に状況を伝えた際にチームがすぐにサポートしてくれたことは、チームへの信頼感を高めるきっかけともなりました。

小さな一歩：状況を共有するための具体的なアクション

この失敗経験を踏まえ、私はリモートワークでタスクに詰まった際に、抱え込まずに状況を共有するための「小さなアクション」を意識的に行うようになりました。

  1. Daily Stand-up で具体的な困難を共有する:

    • 以前は「〜をやっていました」「〜を進めます」といった報告だけでしたが、今は「〜のタスクで、特にXXの部分で理解に時間がかかっています」「YYという技術的な制約に直面しており、解決策を調査中です」のように、具体的に何に困っているかを Daily Stand-up の場で伝えるようにしました。
    • 困っている点を具体的にすることで、聞いている側も「それなら知っている」「あの資料が役に立つかもしれない」と気づきやすくなります。

  2. チャットツールで気軽に「つぶやく」:

    • 正式な相談としてではなく、チームの共有チャンネルなどで「今、ZZでこういう挙動になって困っているんだけど、何か情報ありますか？」のように、少し砕けた形で状況を「つぶやく」ようにしました。
    • これは質問というよりは状況共有に近いですが、これを見た他のメンバーが「それ、自分もハマったことあるよ」と反応してくれたり、会話のきっかけになったりすることがありました。

  3. 1on1 や雑談タイムを活用する:

    • タスクの状況を直接伝えるのが難しければ、チームリーダーとの 1on1 の機会に相談したり、チームで設けているオンラインの雑談タイムなどで「最近、このタスクが難しくてちょっと苦労しています」のように、ライトな調子で触れてみたりしました。
    • こうした非公式な場での情報共有が、後から正式な相談につながることもあります。

  4. 助けが必要な箇所を具体的に整理する:

    • 漠然と「助けてほしい」と言うのではなく、「XXの機能におけるYYのバグの原因特定で詰まっている」「ZZのライブラリの使い方で、サンプルコードを見ても動きが理解できない」のように、具体的にどの部分で、どのような種類の助け（情報、助言、ペアプロなど）が必要かを自分の中で整理してから伝えるようにしました。
    • これにより、相手もどう協力すれば良いか明確になり、スムーズなサポートにつながります。

これらの小さなアクションは、どれも始めるのに大きな勇気が必要なわけではありません。しかし、こうした行動を意識的に行うことで、徐々にチームに自分の状況を開示することへの抵抗感が薄れていきました。そして、私が困難を共有した際にチームメンバーが温かくサポートしてくれる経験を重ねることで、チーム内の心理的安全性が高まっていることを実感できるようになりました。

まとめ：早期の共有が自分とチームを助ける

リモートワーク環境では、タスクの進捗状況や困難を早期に共有することが、問題を拡大させないために非常に重要です。「助けてほしい」と言うことには、最初は心理的なハードルがあるかもしれません。しかし、それは決して能力不足を示すものではなく、チームとして共通の目標に向かう上での健全なプロセスです。

今回ご紹介したような小さなアクションから始めてみてください。あなたの小さな「困っています」「手伝ってほしい」という一言が、あなた自身の負担を軽減し、チーム全体の生産性と心理的安全性を高める第一歩となるはずです。