リモート安全体験談

リモートワークで「休憩します」と言いにくい心理:あるエンジニアの体験談と小さなアクション

Tags: リモートワーク, 心理的安全性, 休憩, 体験談, エンジニア

リモートワーク環境が普及し、多くのエンジニアが場所や時間にある程度の柔軟性を持って働けるようになりました。しかし、その一方で、オフィス勤務とは異なる心理的な壁に直面することもあります。今回は、特に「休憩や離席をすることに気兼ねしてしまう」という心理に焦点を当て、私の体験談と、それに対して取り組んだ小さなアクションについてお話しします。

リモートワークで「休憩します」が言えない、言いにくい心理

リモートワークでは、他者から直接的に自分の作業状況が見えません。これは集中しやすいというメリットがある反面、「常にオンラインで繋がっている」「いつ見られているか分からない」といった感覚につながり、結果として「サボっていると思われたくない」「パフォーマンスが低いと思われたらどうしよう」といった不安を生むことがあります。

私自身も、リモートワークに移行した当初、このような心理に陥った一人です。オフィスにいた頃は、自然と周囲の動きに合わせて休憩を取ったり、同僚に声をかけて少し席を外したりすることができました。しかし、リモートになってからは、意識的に休憩を取るタイミングを決めなければ、際限なく作業を続けてしまったり、逆に「今休憩して大丈夫かな」と妙な躊躇を感じたりすることが増えました。

特に、トイレ休憩や短い離席をする際も、「Slackのステータスを変えるべきか」「チャットで一声かけた方が丁寧か」などと考え込み、結局何もせずに急いで戻る、といった行動を取りがちでした。これは、自分自身がチームの一員として信頼されているか、自分のペースで働くことが許容されているか、といった心理的安全性に関わる部分であったと、今振り返ると思います。

体験談:休憩をためらった結果、集中力が続かなくなった

リモートワーク開始当初、私は前述のような不安から、休憩時間を削って作業にあたる傾向がありました。午前中から昼休憩までノンストップでコードを書き続け、午後も同様に作業に没頭する、といった日々が続きました。離席も最小限にし、飲み物を取りに行ったりする際も、できるだけ早く戻ることを心がけていました。

しかし、その結果、かえって集中力が続かなくなり、以前なら簡単に解決できていたような問題にも時間がかかるようになりました。疲労が蓄積し、ちょっとしたことでイライラしたり、チームメンバーとのコミュニケーションにおいても余裕がなくなったりすることもありました。これは明らかに生産性を下げており、何よりも自分自身の心身の健康にとって良くない状態でした。

ある日、先輩エンジニアとの1on1の際、何気なく「リモートだと、ついつい休憩を取るのを忘れてしまって」と漏らしたことがありました。その時、先輩は「それは良くないね。休憩は脳をリフレッシュさせるためにすごく大切だよ。オフィスにいる時と同じように、意識的に休憩時間を取った方がいいよ」と優しくアドバイスをくださいました。さらに、「うちは特に、各メンバーが自分のペースで働けることを重視しているから、休憩くらいで評価が変わることはないよ」という言葉も添えてくださいました。

この一言で、私の心の中の霧が晴れたような感覚がありました。「サボっていると思われるかも」という不安は、自分自身の思い込みや、チームとしての共通認識が不足していたことから生まれていたのかもしれない、と気づかされたのです。

心理的安全性を高めるための小さなアクションと気づき

先輩の言葉を受けて、私は以下の「小さなアクション」を試みることにしました。これらはどれもすぐに実践できる、ハードルの低いものでした。

  1. 短い休憩を意識的に取る習慣をつける:
    • ポモドーロテクニック(25分作業+5分休憩)を参考に、まずは30分〜1時間に一度、意識的に数分間手を止める時間を作るようにしました。席を立つ、軽いストレッチをする、窓の外を見るなど、PCから離れることを意識しました。
    • タイマーアプリやツールの利用も有効です。強制的に休憩時間を知らせてくれるので、作業に没頭していても気づきやすくなります。
  2. 離席時はステータスを変更する:
    • Slackなどのチャットツールのステータスを「離席中」や「休憩中」に変更することを習慣にしました。ごく短い離席(数分)であれば必須ではありませんが、少し長めになる場合は、チームメンバーへの無用な心配をかけないためにも有効だと感じました。
    • 同時に、チーム内で「短い離席でいちいちステータスを変えなくて良い」といった暗黙の了解やルールがあれば、それに従うのが最も自然です。ルールがない場合は、まず自分から実践し、必要に応じてチーム内で共通認識を作る提案をしてみるのも良いかもしれません。
  3. 「休憩は必要」という考え方を定着させる:
    • 休憩はサボりではなく、むしろ集中力を持続させ、生産性を維持・向上させるために不可欠な時間であると、自分自身に言い聞かせました。偉大なエンジニアやクリエイターほど、休息の重要性を理解している、という記事を読んだことも、考え方を改める助けになりました。
  4. チーム内で休憩や息抜きの話題を出す:
    • チームの雑談チャンネルなどで、「今日は天気が良いので少し散歩してきます」「コーヒーブレイク中」など、軽い調子で休憩や息抜きの話題を出すようにしました。これにより、他のメンバーも休憩を取りやすい雰囲気になったり、「自分だけじゃないんだ」と安心したりすることができました。

これらの小さなアクションを続けるうちに、「休憩を取ること」に対する心理的な抵抗感は徐々に薄れていきました。自分のペースで適切な休憩を挟むことで、以前よりも集中力が持続し、結果として作業効率も向上したように感じます。また、チームメンバーも自然に休憩や離席をステータスで示すようになり、お互いの状況が分かりやすくなるという副次的な効果もありました。

まとめ

リモートワークにおける「休憩します」と言いにくい心理は、多くのエンジニアが密かに感じている課題かもしれません。これは、他者からの評価への不安や、チーム内での共通認識の不足といった、心理的安全性の欠如に根ざしていることがあります。

しかし、ご紹介したような「短い休憩を意識的に取る」「離席時にステータスを変える」「休憩の重要性を理解する」「チーム内で軽い話題にする」といった小さなアクションを実践することで、この心理的な壁を乗り越えることができる可能性があります。

休憩を適切に取ることは、個人の心身の健康を保ち、集中力や生産性を維持・向上させるために非常に重要です。そして、チーム全体が「メンバーが各自のペースで適切に休憩を取ることを許容する」という共通認識を持つことが、より心理的に安全なリモートワーク環境を築く一歩となります。

もし、あなたが今、リモートワークで休憩や離席に気兼ねしているなら、まずはタイマーを使って短い休憩を取ることから始めてみませんか。そして、もし機会があれば、チーム内で休憩の重要性について軽く話題にしてみるのも良いかもしれません。小さな一歩が、より快適で生産的なリモートワークにつながるはずです。